Vol.29 ディズニーランドプロジェクトメインビジュアル

2017.06.19

六月の某日曜日、私は葛飾幼児グループのOBの家族たちとディズニーランドにいました。
何々それ?どういうこと?葛飾幼児グループもとうとうディズニーランド遠足を導入したの?えっ?でも、なんでOB?

ことの発端は、あるお母さんのつぶやきでした。
「うちの子は最近他害がひどく、特に自分より小さい子をはたいてしまう。ミッキーが好きだし、ディズニーランドに一度連れて行ってあげたいけど、両親だけでは無理。多分うちは学校を卒業したら早くに入所施設に入れるつもりなので、幼いうちの今、行けたら良いんだけど、行きたいなぁ」。
それを聞いた私は素直に心を打たれ、「あぁ、あの私も大好きな夢の国に、ぜひこの親子も行けたら良いのになあ、連れていってあげたいなあ」と思ってしまったのです。

このN君は重度知的障害と自閉を併せ持ち、終始支援が必要なお子さんです。
ママはこれまで感覚過敏や他害に対して、イヤーマフやシャワーキャップなど、対処療法ではありますが我が子のために努力し、向き合えているなぁと常々感心していたことも、心を動かされた原因の一つかもしれません。

その時に出た言葉は「行こうよ、行こうよ、他のママにも協力してもらって、企画を立ててもらえば付き合うよ。私だけでは力不足なら、K(職員)にもお願いしてみよう」でした。
結果、5家族プラスKと私の総勢15人のグループが出来上がったのです。N君以外は母子、きょうだいの参加でした。

さて実行するからには、N君に誤学習を積ませるわけには行きません。
両親にも自信をつけて帰ってもらいたい。
快く誘いに応じてくれたKも私も、相当な覚悟をしてこのプロジェクトに臨みました。
当日は、頭痛予防の紫外線除け素通し眼鏡と、ジャージにスニーカー、帽子も必須。もちろん帽子と眼鏡は、N君にはたかれそうだったら外します。
また、極力待ち時間を減らしたいので、事前にチケットは一括購入し、各家族には、電話でゲストアシスタンスカードの予約をしておくようお願いしました。
N君家族は車で送迎し、尚且つ当日は、アトラクションを利用するのも出口から逆走する最短コースを選択しました。
他の家族の中には、ママ自身が初ディズニーという便乗組もいましたが 「私とKはN君しか見ないよ。各自子どものことは、しっかり見てね」と言っていたにも拘らず、いざとなったら私は先頭で案内することになり、N君のことはKがフォローすることに。しょっぱな二家族がはぐれるなど、前途多難な雲行き?

N君は初めにプーさんのハニーハントに乗りましたが、最短距離でも暗い空間の移動はあるので、しり込みし拒否が出ました。
ところが、いざアトラクションが始まると両手を振って大喜び。目が生き生きと輝いて、本当に嬉しそうです。
結果、次のライドへの期待が生まれ、トゥーンタウンでは、郵便局のポストからミッキーの声が聞こえてくるのにはまって、繰り返しボタンを操作していました。
ミート・ミッキーでは、巧みなキャストの誘導で子どもたち全員、カメラ目線で家族ごとに写真を取ることが出来、裏方に徹した私たちも「ハグしてくださーい!」ギューッ!

ランチタイムは注文の行列に時間がかかったものの、運良く全員座ることが出来、一休み。

高い所に登るのが大好きなN君だけに、ビッグサンダー・マウンテンやスプラッシュ・マウンテンのジェットコースター系も大好き!ピーターパン空の旅もご満悦。
アリスのティーパーティーでは、周りの景色が流れて認識できない位にカップを回し、N君は真ん中のテーブルを叩いたり、後ろに寄り掛かったりして大喜び。
Kからは、あのカップだけ異次元の回り方だったと言われ、パパは少し酔ったらしい。全く平気な私は大丈夫?

最後のスティッチ・エンカウンターでは、さすがにティーカップを回し過ぎたのか寝息を立てて爆睡してしまったN君。
でも不機嫌な寝起きに、ママが朝撮っておいた車の写真を見せると、スッと気持ちが切り替わり、解散後、お土産を買ってすんなり駐車場へ。

こちらが予想していたよりN君はずっと落ち着いていて、他害は全く出ませんでした。
そして、何となく先がほの暗い所があると、アトラクションに通じていると思うのか、ママの手を振りほどき、ジェットコースター系が大丈夫なパパと一緒に行きたがるのが、何とも微笑ましかったです。
帰りの車中も新しいトミカを持っておとなしいN君。パパとママの連携も素晴らしく、無事にミッションを終えることが出来て私もホッとしました。

ひょんなことから始まった今回のプロジェクト。
夢の実現に向けて支援が必要なら、支援が必要ですと声を上げることが、はじめの一歩で、成功するための手立てを考えるのが、本来の支援のあり方なのかなぁと、私自身も成功体験の余韻に浸っています。