Vol.5 なんくるないさぁメインビジュアル

2009.07.31

知的障害のある娘と暮らしていると、時々心から嬉しいと思える出来事や人にめぐり会うことがあります。3月に沖縄を訪れた時もそうでした。

ことの発端は、昨年初めてやったスノーケリング。
美しい海に魅せられて今年はぜひダイビングをやってみたい。でもさすがにダイビングは娘にとって難しく、一緒に楽しむことはできません。
じゃあ諦める?いえいえ娘をどこかに預けるか、ホテルで一緒に過ごしてくれる人を探しましょう。
まずは宿泊予定のホテルに問い合わせしました。

保護者が楽しむためにハンディのある娘を預けるという、万人に受け入れてもらえるとも思えないオーダーに対し、インフォメーションの武田さんは、子供を預けてダイビングを楽しみたい宿泊者のために、近隣のホテルが皆利用しているベビーシッターのいる保育園を教えてくれました。
そして「そこがだめだったらまた考えましょう」と言ってくれました。
素敵!「だめだったらごめんなさい」ではなく「また考えましょう」。
私は、わぁまた電話してもいいんだと嬉しくなり、きっとうまくいくと夢が膨らみました。
結局その保育園は、観光客のために乳幼児から12歳までの児童を一時預かりするが、障害児・者は経験者もいないため預かれないとのことで、もう一度武田さんに電話することになりました。
武田さんは、ヘルパーは市民でないと使えないことも調べてくれ、そういったサービスは都市部に比べて遅れていると謙遜しながら、最終的にNPO法人でやっている児童デイサービス「そら」の親川さんを紹介してくれました。
この親川さんも実に懐の深い方で、娘の状態をいろいろとお話ししても「そんなのは何でもない」と土曜日のデイサービスの中で、給食を含む4時間の預かりをどーんと引き受けてくれました。

さて実際にお会いしてみるとお二人ともとても素敵な方で、武田さんは手話に精通し、やはり障害者のためのNPO法人を立ち上げた友人をお持ちで、ホテルから車で30分ほどの「そら」までの地図を用意して待っていてくださいました。

親川さんともNPO法人を運営している者同士いろいろとお話ししましたが、他県からの預かりをしたのは初めてだそうで、「こちらも良い経験になりました」と言ってくださり、私が「東京の友人に『こういうところが見つかった』とたくさん宣伝してきたので、今後もお願いします」と言うと、「いいですよ」と快諾してくださいました。
NPO法人だからこその柔軟な対応に心から感謝した次第です。
娘も若い女性スッタフからは「ずっとここを利用している子だと思いました。」と言われたくらい馴染んで、楽しい時間を過ごせたようでした。
もちろん長女と私が、初ダイビングを心行くまで堪能することができたのは言うまでもありません。

沖縄には「なんくるないさぁ」という方言がありますが、それは「なんでもないよ、心配しなくていいよ」という意味で、ゆったりした響きとともに、お二人の心を集約した言葉のように感じたのでした。