Vol.49 永遠のあこがれメインビジュアル

2024.11.25

最近ZOOM配信である人の講演を聞きました。私よりちょうど10歳年上のその人は、人の名前に躓くことはあったものの、2時間淀みなく話し、ページを1枚1枚めくりながら読む本の大切さをしっかり伝えてくれました。講演タイトルは「絵本にタブーはない……私の絵本体験」。講師はクレヨンハウス主宰落合恵子さん。

私が高校生の頃、彼女はラジオ局文化放送のアナウンサーで、レモンちゃんの愛称で親しまれ超人気者でした。ラジオの深夜番組セイヤングのパーソナリティを務め、私は受験勉強のタイミングで聞いていました。そのうち彼女の母上がはじめからシングルマザーだったこと。新聞記者になりたかったが、それを理由に入社できなかったことなどを知りました。今回の講演の中でも、アナウンサーの頃「今日の下着は何色ですか?」の質問をはねのけ、後で上司から注意されたエピソードを話していましたが、私は彼女の生い立ちや生き方の根底にある反骨精神、負けじ魂のようなものに、ずっと共感してきました。

クレヨンハウスが表参道にあるころは、何度行ってもお会いすることは無かったのに、遠い吉祥寺に引っ越してから5か月後にようやく訪れてみたら、なんと目の前に彼女が……店員に紛れて普通に働いていました。はじめは、想像していた以上に小柄なその姿を遠目から見ていただけでしたが、ランチを終えて2階に上がると、彼女がお客様と話している場面に遭遇しました。話がひと段落して、その場を去ろうとしている彼女を私は意を決して呼び止めました。

少しお話させていただけますか?の問いかけに優しく応じてくださったその人を前に、私は涙が止まらなくなりました。ああ、推しに泣くってこういうことなんだと、思いがけない涙に戸惑いながら、ずっと憧れていたこと、出身大学を目指したけれど叶わなかったこと、地元での講演会の時は仕事で行かれなかったこと、今の仕事のことなどをお話させていただきました。彼女は「私はこれからもうひと暴れしようと思っているの、福祉と農業を結びたいと思っているのよ」と話してくださり、そういうところも好きですというと、名前と住まいを聞いてくださり、「メールして、でも無理はしないでね」とおっしゃってくださいました。吉祥寺は幼いころ週末になると、母上と一緒に手作りのおにぎりを持って動物園や公園を訪れた思い出の地だそうです。

「わたし は わたしです。ほかのだれでもありません。わたしは よりわたしになるのです。落合恵子 2024.10.19」講演の最後に手書きで残された言葉です。彼女らしい潔い言葉。私も残りの人生、しっかり私を生き抜きます。